音楽葬



    いま考える、自分の葬儀。その日は、いつか来る…、だから、いま、音楽を聴け
                   「幕を引け。喜劇は終わった」 フランスの舞台作家、モリエールの最期の言葉だと伝えられています。

  男の、女の人生が響く音楽葬。「幕を引け、喜劇は終わった」そのエピローグは…音楽で

   人生を喜劇、と喝破する作家の心。その切れ味は、人をある幸せに導きます。

遺影は
自分で選び

奏でる音楽と
流す映像は
自分で決める

祭壇の花の色
白と限らない


それが私の
スタイルだから
裕次郎と同じ病で、夫は歌とともに旅立った

なんで、あんなに飲むのよ…。

病室にお酒を持ち込むなんて…。裕次郎じゃあるまいし。

アルコール性肝硬変って言われて、飲んだら死ぬって言われて、それでも隠れて飲んで入院して。

なんで飲むのよ…。

子供たちより、私より、87歳のお義母さんたってあんなに心配してたのに、あんたは、自分のお酒の方が良かったのね。大事だったのね。

そりゃ、あんたはいいわよ。
飲みたいだけ飲んで。ポロボロになつて勝手に逝ってしまつたんだから。

病院から急な電話が来たのは一昨日の夜中…。三時過ぎてた。

食道静脈瘤の破裂で即死に近かったって、そんなこと言われて、どうすればいいのよ。
あんたのお通夜に、お酒なんか出さないわ。
冗談じゃないわ、もうお酒なんて見るのもイヤ。

ほら、みんな怒ってないでしょ。
あんただけよ、飲みたいのは。
写真の中で笑わないでよ。

ね、聞こえる?
あんたの友だち。
ひどいお酒に、いつも仕方なく付き合ってくれた人たちが、酒がなくては可哀想だって、歌ってくれてる。

あんたが好きだった裕次郎の歌。
「ブランデーグラス」って、あんた、煙草片手にグラスを持って、よく歌ってたじゃない。

みんな、今夜はお酒抜きで、あんたの為に歌ってくれてる。
裕次郎の歌。
あんたと同じ、食道静脈瘤だった人。

でも、あたしは、そんなあんたが好きだった。

あんたに高いお酒を売ったのはあたし。
「銀恋」を歌ったのも、きっとあたしが一番だった。

思い出すわ。あの頃のこと。
銀座じゃないけど、あなたと私の深夜の恋の物語……。
    

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